首折り男のための協奏曲 伊坂幸太郎

「あとがき」にも書いてある通り、不思議な本。

短編集のようだが短編集ではない。長編のようで長編ではない。そんな感じの本でした。

 

首折り男と泥棒の2部構成であり、それぞれも伊坂幸太郎式短編でできている。首折り男短編集、泥棒黒沢短編集といった構成だと感じた。ちなみに、伊坂幸太郎さんの短編集は話に繋がりがあり、一般的な短編とは異なる。今回もそういった感じに仕上がっている。

 

印象的なのはやはり、人の攻撃性と罰(ばち)。攻撃性は無理やり抑えれば、歪な形となって表れる。いわゆる虐め。しかし、神様も悪い行いを見ている時があって罰(ばち)となって現れる。これが印象的でした。

日々の生活の中でも人の攻撃性を感じることは多々ある。もちろん自分の攻撃性も。普通は自分の攻撃性を抑えるなり、何か他の形で他人に害が及ばないように発散すると思う。しかし、中には他人に害を及ぼす人もいる。そういった人と遭遇し被害にあった時、理不尽や不平等だと感じることがあった。何か罰があたれば良いとも。実際は罰があたったか分からないが。

 

この作品では、悪い行いを神様が「たまたま」見ていたから罰があたる、という設定。そこが面白い!今まであった理不尽な事、これから起こるであろう理不尽な事。神様がたまたま見ていなかったから罰があたらなかった。神様がたまたま見ているなら罰が当たる。こう思えば救いがいくらかあるような気がする。理不尽な場面で度々読み進むのが遅くなったが、最後まで読んで良かった。そう思える作品でした。

 

この作品は

鬱憤がたまっている、理不尽な目にあったばかり、そんな人にお勧めしたい作品です。